はじめに
今日は絶好調といい気分でいたら、トラブルで一気に落ち込んだり。
特に何もなくとも急にやる気がなくなったり、不安になったり。
いい天気のもと散歩に行くと、気分が晴れたり。
1日の中で感情は目まぐるしく変わり続けます。
感情は天気のようなものだ。
常に存在し、常に変わり続ける。
穏やかと思えば激しく、心地よいかと思えば不快に、予期できるかと思えば想像もできない行動をする
ラス・ハリス著、幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない
ラス・ハリス著『幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない』を紹介します。
副題は『マインドフルネスから生まれた心理療法ACT入門』です。
本書は、ACT(アクト:アクセプタンス&コミットメント・セラピー)という心理療法をベースにしています。
ACTは心理学者スティーブン・ヘイズとその同僚、ケリー・ウィルソンとカーク・ストローサルによって米国で開発された心理療法。
うつ、不安神経症、慢性の痛み、麻薬中毒、禁煙、職場のストレス軽減など様々な症状に大きな効果を発揮したと記されています。
ACTは、人生を豊かに、最大限に、意味のあるものにすると同時に、人生で不可避な苦痛に効果的に対処する手助けをすることを目的としています。
本書のタイトル「幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない」にある幸福は、「豊かな、満ち足りた、意味ある人生」を指しています。
人生は痛みを伴うのが現実であり、それを避けることはできなくとも、痛みのために居場所を作る、その衝撃を和らげる、痛みがあっても生きるに値する人生を作り上げる。
このためのやり方を本書は示してくれます。
本書の印象的なところを2点、紹介します。
- 自分の思考や感情をコントロールできなければいけないという思い込み
- 感情と戦うことにエネルギーと時間を費やしてはいけない
幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない
自分の思考や感情をコントロールできなければいけないという思い込み
一つ目は、「幸福の罠を支える4つの神話」の神話4について、本書では、コントロールなんて幻想だ、と述べています。
- 神話1 幸福は全ての人類にとって自然な状態だ
- 神話2 幸福でないのはあなたに欠陥があるからだ
- 神話3 より良い人生を創造するためにネガティブな感情を追い払わなければならない
- 神話4 自分の思考や感情をコントロールできなければいけない
ネガティブな思考や感情を追い出したり、コントールすれば幸せな状態、ごきげんな状態が得られるとの思い込みがあったため、驚きました。
あなたは、物事をポジティブに考えようと数え切れないほど試したに違いない。だがネガティブな考えはいつも戻っきたのではないだろうか?(中略) これらのテクニックに効果がないわけではない。確かに一時的には気分がよくなるかもしれない。ただ、長い目でみると、ネガティブな思考を追い出すことはできない。
これは怒り、恐れ、悲しみ、不安、罪悪感などにも当てはまる。これらを追い払うための心理的手法は世に溢れている。だがネガティブな感情が消え去ってもしばらくすると戻ってくるのはあなたも経験したに違いない。再び追い出す・だがまた現れる。この繰り返しだ。
ラス・ハリス著、幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない
人生をコントロールするには、感情もコントロールできなくてはならないと思い込んでいないでしょうか。
人生のコントロールに感情のコントロールは必要なく、ネガティブな思考や感情は不快だが害をなすものではないと本書は述べています。
感情と戦うことにエネルギーと時間を費やしてはいけない
苦痛な感情に対して戦えば戦うほど多くの問題が引き起こされます。
例えば、不安の感情に対して「何でこんな気分になるんだ?」という怒りや、「こんなに不安を感じていると健康によくないのではないか」という不安、「大人なのだから感情的になってはいけない。情けない」という罪悪感を感じると、エネルギーや活力が奪われます。
さらにこの不安の感情による不快を追いやるために、喫煙、アルコール、ギャンブル、買い物、ネットなどに依存してしまうと、人間関係や健康の問題が生じることになります。
本書では、「悪あがきのスイッチ」をオフにして、感情と戦うことにエネルギーと時間を費やさないという方法を示しています。
具体的には、感情の居場所を作ってやるという思考法を使います。
不快感は人生につきものの感覚であり、戦わずに受容するというアプローチが新鮮でした。
まとめ
ラス・ハリス著の『幸福になりたいなら幸福になろうとしてはいけない』の印象的な2点を紹介しました。
- 自分の思考や感情をコントロールできなければいけないという思い込み
- 感情と戦うことにエネルギーと時間を費やしてはいけない
マインドフルネスと行動心理学の最先端の研究に基づいたACTの技術が、すぐに使える形で解説されています。
感情をコントロールするのではなく「受容する」感情習慣を身につけましょう。